古い民謡 その1 木下しも茶船 |
江戸時代、寛文の頃(1661〜)からはじまった利根川下流の観光船が、「木下しも茶船」です。今の印西市木下(きおろし)の河岸で経営されていたもので、香取、鹿島、息栖(いきす)の三つの神社を巡拝するコース(三社詣で)で知られていました。江戸の文人たちの利用はもちろん、仙台藩の藩主は何代にもわたって、大勢の家来をしたがえて、この茶船による遊覧を楽しんでいます。 その船の中で歌われたのが「木下しも茶船」です。地元印西市が、まだ印西町であったころの町長室にはその歌詞がかかげてありました。しかしどんな曲であったのかは忘れられ、うたえる人が地元にはいなくなっておりました。その唄が、木下河岸の対岸下流に位置する、茨城県河内町平川のオビシャ行事の中でいまもうたいつがれていたことがわかったのは、平成になってからのことです。しかも、驚いたことに踊りまで昔のままに伝承されていました。 この唄は、「銚子大漁節」の元唄になったものです。「銚子大漁節」は、ウラからうたい出すのが特徴ですが、この唄はオモテからうたい出します。そのため素朴な味わいがあります。伴奏もいまは太鼓だけです。しかし本来は、歌詞に「中には三味線、笛、太鼓」とありますとおり、にぎやかな騒ぎ唄だったと思われます。「利根地固め唄保存会」では、会員がこれを習って、河川にかかわる催し等で実演をして、たいへん喜ばれております。平川のみなさんによる対外実演はいまのところ、まだされておりません。 |
木下しも茶船 (河内村平川・おびしゃ行事の唄から) 1、一ツトセー 一番舟をば乗りい出し 2、二ツトセー 日本で名高きしも茶舟 3、三ツトセー 皆も出て見よこの河岸へ 4、四ツトセー 夜に出て夜に来る木下の 5、五ツトセー いつに似あわぬ今日こそは 6、六ツトセー 向こう雨風いとわずに 7、七ツトセー なんというても木下の 8、八ツトセー 山は後ろよ前は川 9、九ツトセー こげば神崎はや香取 10、十ォトセー とおと三社をまわり来て *1 「遊芸船で下り来る」とうたっているようにも聞こえます。 |
芦原修二(2001年9月1日) |
※外部リンクは2022年4月8日追加(西山正義) |